診療科・各部門紹介
当院で行われている主な放射線治療
乳房照射(乳房温存手術後の放射線療法)
温存した乳房や周囲のリンパ節からの再発を防ぎ、目に見えないがん細胞を根絶させるために全乳房照射を行います。わきの下のリンパ節に転移の個数が多い場合は、鎖骨上窩へのリンパ節転移を予防するために、乳房に加えて鎖骨上窩に放射線を照射します。
また、手術した切除部の断端にがん細胞が残っていたり、その近くにがん細胞があった場合には、追加照射(ブースト照射)を行います。局所再発を抑える効果が高いことから、切除部が陰性でも若年層(特に50歳未満)ではブースト照射を行うこともあります。
放射線治療を続けますと、放射線により皮膚が赤くなったり、カサカサしたり、日焼けに似た症状を感じることがあります。この症状は、軟膏や保湿剤を塗ることで落ち着きますので、治療が終了しても塗ることをお勧めしています。また、頻度は低いですが、放射線性の肺炎が起こることがあります。照射期間中や照射が終わってから息苦しいことなどありましたら、スタッフや担当医にご相談ください。
ひだり乳房照射において、晩期に放射線性の心筋梗塞や狭心症が増える報告がありますが、当院では、通常照射でも心臓になるべく放射線があたらないように工夫して計画を作成しています。また、深く息を吸って止めることで、より心臓に放射線が比較的あたらないようにして照射する、ひだり乳がん深吸気息止め照射も行っています。
乳房照射左乳房DIBH
ひだり乳がん深吸気息止め照射:DIBH(Deep Inspiration Breath Hold)
通常の呼吸状態でひだり乳房に放射線治療を行うと、心臓に比較的高い線量の放射線があたることがあります。しかし、患者さんに息を大きく吸ってもらった状態で、息を止めている間に照射することで、肺が膨らみ乳房(胸壁)と心臓の距離を離すことができ、心臓にあたる放射線量を減らすことができます。副作用による心筋梗塞などの心疾患のリスクを低減することに期待がもてます。
医師の診察で適応となった患者さんには、1回の治療の中で、約4回に分けて大きく息を吸って、20秒ほど止めていただくことになります。一見、簡単そうに思えます。しかし、毎回の治療で同じように息を吸って深吸気で止めていただくことは重要であり、ましてや寝た状態で息を止めることは難しいです。正確に照射するためには、患者さんの協力が必要です。スタッフから息止めの説明を聞いて、そのトレーニングを行う必要があります。呼吸の状態を計測する装置を使い、再現できるように練習を行います。
すべての症例が実施対象ではなく、患者さんひとりひとりの状態に合わせて実施を検討しています。
当院では、他の照射も含め、専門知識を有する経験豊富な医師、スタッフが担当しており、安心して放射線治療を受けていただいております。
矢印が付いているところに放射線があたっています。大きく息を吸うことで、矢印部分の放射線があたる心臓(橙色線)の体積が減っていることがわかります。